これからの台湾カルチャーノート Vol.1台北「草率季 Art Book Fair & More」で世界のアートブックを発見

台湾品質をご覧の皆様はじめまして!台北と東京をベースに活動しているイラストレーターの永岡裕介と申します。

日本や韓国はもとより、欧米各国のアートやファッションにも感度が高く、更に独自の観点も取り入れたカルチャーが近年さらに注目を集めている台湾。そんな現在進行形で日々変化しつつある台湾のクリエイティブシーンをこれからリポートしていきたいと思います。

記念すべき第一回目は10月13日から15日の3日間にわたって開催された台北のアートブックフェア『草率季 Art Book Fair & More』の様子をお届けしたいと思います。

 

「草率季 Art Book Fair & More」とは?

今年が2回目となる『草率季 Art Book Fair & More』(草率季ツァオシュアイジー)は、「草字頭  / SUPERADD / ​空場」という3つのデザイン/クリエイティブチームが主宰となって行われました。当日は台北のアートファンとクリエイター達が多く駆けつけました。

台北のアートブックフェス草率季

台北のクリエイターたちの間で「インディプレス(出版)」や「ZINE(ジン)」といったワードが大きなトピックとして認知されてきていると、ここ数年肌で感じます。

出展ブースの殆どを台湾のアーティスト・書店・出版社が占めた昨年から打って変わって、今年は100を超えるブースのうち53ブースが日本、韓国、タイといった海外からの参加グループでした。このことからも、台北が一つのインディペンデントなアートを盛り上げている中心地の一つとして、アジアの各国に認知されてきたといえるでしょう。

今年の会場はは多くのアートイベントが行われる「松山文創園区」内にある、約80年前のタバコ工場跡地をリノベートしたイベントスペース「北向製菸廠」でした。

『草率季 Art Book Fair』の特徴は、毎回ブックフェア+MOREとして一つのコンセプトテーマを取り入れて空間を展開していること。今年のテーマは「ハーブ」。来場者の目を楽しませるインスタレーションもこのアートブックフェアの特徴のひとつと言えます。

 

では早速『草率季 Art Book Fair』のレポートです。

アートブックフェアの行われた10月初旬台北は連日雨模様。今回僕が訪れたのは一日目も終日雨でした。しかし、あいにくの天気の3日間にも関わらず、連日盛況の様子だったようです。

台湾のアートブックフェアのブース

開始早々まさかのハプニング?

オープニングイベントとプレビューを無事に終えての第2日目、昼過ぎに到着すると会場の様子がどうもおかしい??

なんと施設内が開始30分前に停電というレアハプニング…

(とはいいつつ一ヶ月ほど前に台湾全土で大規模停電があったり、まだまだ危なっかしい台湾インフラ事情?)

エアコンはもちろん照明さえも一切使えなくなってしまったとのことでした…笑。

雨でも比較的明るかった窓側はまだしも、光の届かない会場奥のブースの出展者は携帯のライトでブースを照らして凌いでいるといった感じ。そんな学園祭の様なハプニングにも、来場者は和気あいあいとしたムードだったので、出展者の人たちも安心した様子でした。

 

グローバルな出展者が増えた今年のラインアップ

この『草率季 Art Book Fair & More』開催の一週間前には、東京でもTABF2017(トーキョーアートブックフェア2017)が行われていたという事もあり、欧米も含む海外からの参加者の中には東京→台北とツアーを組んで回っている人たちも多かった様です。

seendosi』from ソウル

そんな東京→台北のツアー組のひとつ、韓国ソウルから参加した『seendosi』。ソウルのアーティストたちのアートブック、自主レーベルのカセットやTシャツなどが販売されていました。ソウルの工場街に構えたイベントスペースでライブやクラブイベントを行っている彼らならではのエッジーなセレクト。

 

今年の台湾のアートブックフェアのトレンドは「meets アジア」

今回参加しているブースの中で特に目を引いたのが、香港や東南アジア各国からの比較的パーソナルな作品を作っているアーティスト達でした。

Tae Parvit』from バンコク

こちらはタイ、バンコクから参加したアーティスト『Tae Parvit』のブース。

海外のアートブックフェアの参加は今回が初めてだそう。彼の作るZINEやスクリーンプリントは、隣で参加していたバンコクのプリントスタジオ『The Archivist』の手によるものだそうです。気取らない自然体のドローイングをまとめたシンプルなZINEと、台湾でもなかなか見かける事のできない大判のスクリーンプリント作品は、インディペンデントなバンコクのアートシーンが垣間みれて、個人的には彼らとの出会いが今回の一番の発見でした。

熊爪兩食bearon』from ホンコン

香港からのこちらも初参加の『熊爪兩食bearon』はコンセプチュアルな写真集をつくる2人組のユニット。日本発の同人コスプレカルチャーをベースにしつつも、所々に見え隠れする象棋(シャンチー)の駒や香港夜市のような中華モチーフのアクセントにどこか不思議な味わいを感じました。

 

台湾ブースは新世代のクリエイター達にも注目

台湾のブースは、個人単位で出展するアーティストのブースも多く見られた去年に対して、今年は書店、出版社、雑誌などを作るデザインチームなどが多く出展が多かった印象。

国内外のインディペンデントなアートブックを扱う書店の、相次ぐオープンが多かったここ数年の台北のモードを現している様でした。

 

レトロ印刷JAM』from オオサカとタイペイ

また昨年台北にオープンした、日本の同人誌を始め多くの個人出版を下支えする大阪の印刷会社『レトロ印刷JAM』のブースもありました。このようなワークスペースを兼ねたスタジオを活用するといった台北の新しい世代のクリエイター達の出現も、ここ数年の新しい動き。

汮川』from タイペイ

こちらは美術大学に在学中の『汮川』という若い2人組のブース。

アートブックフェアの参加は今回ははじめてという二人、今回のZINEやポスターはデザインスタジオ『O.OO』や『レトロ印刷JAM』を活用しているとの事でした。リソグラフ(孔版印刷)は味わいのある仕上がりになるのが特徴で、日本のクリエイターにもスタンダードな印刷方法として知られていますが、彼女達は台北のデザインスタジオO.OOの作品を見て知ったそうです。最近はドローイングなどもこうした印刷方法を前提に描く事も多いとのこと。

 

その他バラエティ豊かなパフォーマンス

また、会場の中心に設置されたライブスペースではDJ、ハングドラムの演奏やコンテポラリーダンスなど多種多様なパフォーマンスが繰り広げられていました。

 

ブースを一通り巡り、日も暮れかけた頃…。

「もし電気が復旧しなければ、残念ですが8時を待たず、真っ暗になる前に早めに切り上げる」と主宰者からの悲痛なお知らせが…。

雨が降り続き、エアコンも効かない蒸し暑い会場内で、チラホラ参加者の顔にいらだちが見え始めたその時、

電気がついた!!!

一同歓声が上がったこの瞬間、この日一番のハイライトでした笑。

来年の開催はまだ未定だそうですが、台湾のクリエイター達とも気軽にコミュニケーションをとったり、まだ見ぬ新しい魅力を発見できるアートブックフェア。興味が湧いたら日本から参加してみるのも面白いと思います。

草率季 Art Book Fair & More
https://www.taipei-art-book-fair.com/

テキスト・写真:永岡裕介
編集:岸本洋子

 

永岡裕介ってこんな人

大阪府出身。台北と東京を拠点に活動中のイラストレーター。画家。CDジャケットやイベントフライヤー、小説雑誌の挿画等を手がけています。東京の他、近年はソウル、台北、台中でも展示を行っています。八家将と台湾レコードには目がありません。
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