台湾品質の連載

これからの台湾カルチャーノート Vol.2活版印刷工房『時分印刷』で感じた、台湾の手仕事の今

台湾品質をご覧のみなさん、こんにちは!台北在住のイラストレーター永岡裕介です。南国の台北でも、路上のかき氷店がお汁粉店に衣替え、そしてさすがにTシャツ1枚では寒さを感じるようになってきたこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。

 

月一連載『これからの台湾カルチャーノート』第2回目は、台湾人クリエイターの間で注目を集めている活版印刷工房『Teleport Press 時分印刷』をリポートします。

台湾品質、連載記事

Teleport Press 時分印刷の看板

凹凸のある、一般的な印刷ではなかなか表現できないそのシャープな美しさを感じさせるその独特な佇まいが特徴の活版印刷。でも、これまで活版印刷は「絶滅寸前」で、私たちの生活の中から姿を消そうとしていました。

しかし近年、その価値が再評価され、日本のみならず世界各国でクリエイターから再評価を集めています。最近では東京でも昔ながらの活版印刷に加え、若手世代が始めた新しい活版印刷工房も目にするようになりました。

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そしてここ台北でも同じ流れが。昔ながらの鋳造の字の「型」を販売する活字屋『日星鑄字行』があったり、その味わい深さに多くの台湾人クリエイターも魅了されています。とはいえ実際には活版印刷にトライしたくても、その資金面や技術面でハードルはまだまだ高いというのが台北の現状でした。

そんな中、若手クリエイター達の願いを一手に引き受けてくれる、オープンマインドな活版印刷工房『Teleport Press時分印刷』が昨年台北に開業しました。

工房に鎮座する活版印刷機

MRT忠孝復興駅から歩いて10分ほどの路地裏にある『Teleport Press 時分印刷』。

オーナーのタンシェンさんは香港出身です。

実は台湾のクリエイティブなコミュニティの中には、香港のクリエイターもたくさんいます。タンシェンさんもそんなコミュニティの中の一人。既に香港で開業していましたが、台湾人の奥さんとの結婚を機に台湾での活動を考えていたところ、今の店舗が空くとの知らせが入り、台北での開業を決めたそうです。

もともと写真映像関係の仕事に従事していたタンシェンさん。その本職とは別に、活版印刷の関する技術はすべて独学で習得したとの事。印刷について学び始めた当初は、欧米の活版印刷工房で働くか、パートナーシップ契約で仕事をしたいと思っていたそうです。

しかし、街の電話帳から印刷機を販売する業者を偶然見つけ、中古のハイデルベルグの活版印刷機を購入(※ハイデルベルグとはドイツの印刷機メーカーのこと)。そして実際に印刷機を触りながら印刷の基本を学びんだそうです。その後、知り合いの香港、台湾のイラストレーター達とコラボレーションワークなどを行いながら、試行錯誤を繰り返し、印刷技術を高めていったそうです。

イラストレーターとのコラボレーションワークとサンプル。ポストカードはすべて購入可。

今回の取材前にも何度か訪れた事がありましたが、開店当初は、前面は印刷物を販売するショールーム、奥が印刷機のある工房スペースといった感じでした。現在はメインのハイデルベルグだけでなく、手動の小型印刷機もフル稼働。インクの香りと印刷機の大きな作業音がして本格的な印刷工房に様変わりしています。

重厚さを感じる製版機

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工房に並ぶ印刷機の数々

今はまだ稼働していませんが、中古で購入したという製版機もありました。

ハイデルベルグを操作するタンシェンさん。活版印刷は、紙の種類や環境にプレスの強弱によって印影が変わってきます。機械を操作している間も絶えずわずかな差異に注意しながら、インクの調色や圧力の微調整を行う姿は、無骨な相棒との「対話」というイメージを思わせます。

余談ですが、
台湾の街中、町工場などが並ぶ路地を歩いてると、時々フォークリフトや工作機械に「售(売り出し中の意味)」と張り紙があるのを見かけます。誰がその張り紙を見て買うのかと思っていました。しかし今回そんな台湾人の大らかなバイタリティがどこかでこの『時分印刷』の様なスモールビジネスを後押ししてるのでは、と感じました。

 

彼らの仕事の多くは名刺やショップカードの制作だそうです。また不定期でワークショップを開催したり、小型の印刷機を持ち込んでの出張イベントなども行っているそうです。

アルバイトのシュウさんと

現在工房は大学生のアルバイトと二人で稼働中。取材時はクリスマスカードのサンプルとショップカードを印刷している所でした。アルバイトのシュウさんは普段はイラストレーションを勉強している大学生。『時分印刷』で働く前は一切印刷機械に触った事はなかったそうです。だからこそ、アナログな手作業の実感を体験できる印刷工房でのアルバイトは、学校での授業とはまた違った一つの学びの場になっていると話してくれました。

見本棚で見つけたのは、ワークショップで学生達が作った作品

 

工房の『時分印刷』という名前。印刷にかけた時間を思い起こしてほしい、という意味合いを込めて付けられたそうです。確かに年期の入った重厚な印刷機が高速で動くさまは、まさに一枚一枚の紙に時間を封じ込めているようです。

ワークショップなどの日程はオフィシャルFacebookページで確認してください。見学も随時可能とのことです。また店内では香港や台湾のコレボレーションワークであるポストカードも販売されています。こちらも要チェックです。

(※デリケートな機械が沢山ありますので見学の際は注意してください。)

Teleport Press 時分印刷

住所:台北市復興南路一段30巷5號
営業時間:月曜〜金曜 10:30am- 18:30pm
http://teleportpress.com/

1月27日〜1月28日:一周年記念イベントを開催中
無料で活版印刷を体験できたり、500元購入ごとに素敵なミニギフトがもらえるそう。この間台湾にいるという方、ぜひ遊びにいってみてくださいね。

テキスト・写真:永岡裕介
編集:岸本洋子

 

永岡裕介ってこんな人

大阪府出身。台北と東京を拠点に活動中のイラストレーター。画家。CDジャケットやイベントフライヤー、小説雑誌の挿画等を手がけています。東京の他、近年はソウル、台北、台中でも展示を行っています。八家将と台湾レコードには目がありません。
yusukenagaoka.comInstagram