台湾カルチャー発信地「台感」のロゴ

台感ロゴの意味を知ることで、台湾文化が分かる。ロゴ制作過程を全部見せ!

どこか見たことがある懐かしい色味のグリーン、そして中央に配置された大きな亀とレトロな「台感」という字体。見た人に強烈なインパクトを残す、台湾カルチャーを五感で味わえるTaiwan Tea & Gallery『台感』のロゴ。

しかし実はこのロゴの中には台湾文化の潮流が、ギューッと詰め込まれているんです。

「今月の台感」記念すべき第1回は、台感のロゴができる全過程を紹介します。製作者である台湾人デザイナーChang Chien(以下チャンチェンさん)さんと『台感』プロデュサーの田中佑典に、どのような話し合いから、このイメージが出来上がったのかを1から10まで聞いてきました。

 

デザインの力で「台湾」を日本の人にどう伝えられるのかという緊張感

―まずは台湾品質のプロデューサーである田中さんにお伺いしたいんですが、そもそもZISHI STUDIOのチャンチェンさんに台感のロゴをお願いしたきっかけは何だったんですか?

田中:もともとZISHIのデザインやプロダクトが大好きだったんです。それで去年東京で日台交流系のプロジェクトを立ち上げようとした時に、初めてチャンチェンさんに声をかけさせてもらいました。結局そのプロジェクトが実現することはなかったんですが、今回『台感』をオープンするにあたって、まず先にチャンチェンさんのことが頭に思い浮かびました。

▲左からチャンさん、パートナーのオゥさん、田中さん

―なぜチャンチェンさんにお願いしようと思ったのでしょう?

田中:まずは僕が彼の作品が好きだったからです。チャンチェンさんのデザインは「古いもの」と「新しいもの」のバランスがすごく絶妙。台感が目指している方向性にもピッタリハマると思いました。

―チャンチェンさんは最初に田中さんからオファーがあった時、どう思いましたか?

チャンチェン:台湾と日本をつなぐ架け橋のようなお店のメインイメージを作ってくれないかと聞いた時、嬉しい気持ちとともに緊張感を覚えました。でも自分が台湾代表として台湾のイメージを、日本の人にデザインを通して伝えてみたいと思いやろうと決めました。あと、最初に話を聞いて面白いなと思ったのが、「台感」と「体感」は日本語で同じ発音なんだってね?台湾を文字通り体感できるようなデザインってなんだろうと、純粋に自分でも考えてみたかったんです。

 

台湾固有のモチーフを絶対に使いたい

―最初、田中さんからチャンチェンさんにデザイン上でお願いをしたことはありますか?

田中:僕からリクエストしたことは、「動物を使ってほしい」ということ。

チャンチェン:ZISHIではこれまで動物モチーフのデザインを多く作ってきました。でも台湾をひと目で表現できるような動物は何だろうというところから、デザインを膨らませていきました。

田中:最初は「龍」や「虎」が僕的にはいいなと思っていたんです。

チャンチェン:私も龍や虎が大好き。かっこいいしね。でもこの2つはどちらかというと中国大陸の伝統的なモチーフだから、台湾を表現するには使えないなと思いました。

まず私が最初に思いついたのが、『紅亀粿(アングーグェ)』という亀の甲羅の形に型抜きされた台湾の伝統的なおまんじゅう。紅亀粿とは、もち米で作った生地を食紅で赤く色付けをして、その生地の中に小豆あんを詰めて焼いたお菓子です。台湾ではお祝いの席でよく食べられます。日本でも亀は長寿を象徴する縁起物なんだってね?だから、台感のロゴにもぴったりだと思いました。

▲ チャンさんから最初に届いた紅亀粿の資料とデザイン案

チャンチェン:そして次に思いついたのが「鴛鴦(オシドリ)」。この鳥は日本でもよく知られているよね。いつもカップルで一緒にいる様子から台湾でも「オシドリ夫婦」という言葉がよく使われています。でも台湾では昔は「友情」を象徴する鳥として知られていたそうです。だから日本と台湾をつなぐ「台感」のロゴにぴったりだなと思ってデザインを起こしました。

▲ 続いて届いた鴛鴦の資料とデザイン案

 

―この2つの動物をモチーフにしたデザイン案をもらって、田中さんはどう思いましたか?

田中:デザイン案を見せてもらって、すぐに亀のロゴに決めました。もう言葉抜きで「わぁ!これが自分が欲しかったイメージだ」って感じにバチッと欲しかったものと合致したというか…。さすがチャンチェンさんだなと。

チャンチェン:ありがとう。そして、この後は字体を決めていくことにしました。亀のロゴを中心にして、台湾らしさを表現できるフォントを3種類ピックアップして提案したんです。

▲フォントデザイン案 ①

チャンチェン:まず1つ目は台湾でもっとも歴史がある飲料メーカーである『黒松』が使っている字体からデザインをしました。レトロ感とクールな印象のバランスがいいですね。

 

▲フォントデザイン案 ②

チャンチェン:そして2つ目は台湾の街角にある屋台でよく使われている字体を採用したデザイン。台湾らしいおだやかで親しみやすい雰囲気が表現できると思います。

 

▲フォントデザイン案 ③

チャンチェン:最後は古い時計屋さんや、バイクの修理店などでよく使われている字体。安定感や信頼感そして洗練された雰囲気も感じられるね。

田中:どれも実際の台湾の街の中で溢れている字体で、しょっちゅう台湾を訪れている僕にとっては3つとも見慣れたものでした。この中では、自分が思う台湾の魅力であるレトロ感とクールな感じがよく現れている3つ目のデザインを選びました。今回も即決でした。

▲ 台湾の街に溢れる様々なフォントたち

―お話を聞いていると、『台感』のロゴは田中さんのイメージ通りのものがすんなりできあがった印象です。

田中:はい、本当にここまでは直感で「これだっ!」というデザインが必ずあったので、すんなりデザインを決定していくことができました。

―ここまでという事は、字体が決定した以降に悩んだことがあったんですか?

田中:はい、最後もう色を決められなくって。色んな人に聞いて回りました。どの色も捨てがたくて、大好きで、台湾を表してて…。毎日お腹が痛くなるほど悩みましたよ…。

―では、田中さんをここまで悩ませたロゴの「色」について、チャンチェンさんから説明お願いします。

チャンチェン:そんなに悩んでたんだ、知らなかった(笑)。動物、字体全て台湾の生活の中からインスピレーションを得て制作をしました。そして色を決めるときも、外に出て街を歩いてヒントを探しました。

▲ 台湾好きなら知っているはず!定番サンダルのあの色…

チャンチェン:まずは例のサンダル、列車やショッピングバッグでよく使われる青色を提案しました。

田中:クールなイメージが好き。このちょうどいい落ち着いた色味がたまらん!

▲ またまた台湾旅行経験者なら、絶対に見たことがあるあのビニール袋!

チャンチェン:台湾名物のビニールバッグや、夜市の椅子の色からこのピンク色を抽出しました。

田中:僕の周りの女性から、一番評判が良かった色!岸本さん(インタビュアー)もこれ選んだよね?

岸本:そうですね。意外にピンクのロゴって見ないからインパクトあるなと思って。あと、やっぱりピンクかわいいです…。

 

▲ 台湾カルチャーのひとつである鉄窓、言われてみると緑が多いかも

チャンチェン:最後は鉄窓や大同電鍋の緑。この電鍋の写真は我が家のもの。個人的にこの独特の緑色が好きで選びました。

田中:今まで青色とピンク色を見て、どちらの色も個性があると思うんです。クールなブルーとホッとなピンク。でもこの緑は中性的で、どんな人にも受け入れられるんじゃないかな?自分たちが「台感」で目指すムードに近いんじゃないかなって思って…最終的にこの「緑」を選びました。

 

そして完成したのがこちらのロゴ

台湾カルチャー発信地「台感」のロゴ

―ここまでロゴができる道のりを全て聞かせていただいて、台湾のエッセンスがぎゅっと詰まっているステキなデザインだなと思いました。ロゴの意味を知ることは、台湾の文化や歴史を学ぶことにもつながるというか…。

チャンチェン:この『台感』のロゴデザインだけに限らず、私は昔から生活の中にあるものを取り入れて、デザインをしています。私は台湾人で台湾に住んでいるから、デザインに台湾のモチーフを取り入れるのは本当に自然な流れなんです。

―チャンチェンさんのデザインは0から生み出されたのではなく、元々存在しているものだからこそ、懐かしいんだけど新鮮な印象をきっと受けるんでしょうね。

田中:台湾は昔「日本」だったこともあり、文化的な根っこの部分、つまり原点は同じなんですね。だから僕たち日本人もチャンチェンさんのデザインを見て懐かしさを覚えるんだと思う。でも今は台湾は台湾の、日本は日本の道をお互い進んでいます。だから台湾に対して新しさも感じるんです。

チャンチェン:うん、その通りだね。お互いに似ていて、そして違いもしっかり持っている。私たち台湾人も日本が好きな理由はそこにあるのかもね。

お忙しい中、インタビューを受けていただき本当にありがとうございました。

只是 ZISHI Art

公式ホームページ
Facebook:https://www.facebook.com/zishiart/

 

インタビューを終えて

田中さんに「台感のロゴできたよ」と見せてもらった時、まだお店がオープンする前なのに、随分前から知っている馴染みの店のように感じたんです。

何年も前から、
休日の朝ベッドの中でうだうだゴロゴロしながら、

「特に予定がないなぁ。でも休みの日だし、どこかに行きたいな。」


でも特に行き先を思いつくわけでもなく

「そうだ、蔵前の台感に顔出しに行こうかな。」

と今まで何度も何度も繰り返し、
ここまできたような…。

ロゴをデザインしたチャンチェンさんのお話を聞いて、大好きな台湾のありふれた日常がロゴの中に優しく溶け込んでいるからなんだと気づきました。

「日常に台湾を」

私たちが目指す場所にとても素敵なフラッグを立てられて本当に良かった。これから台湾に興味がある人たちと、このフラッグを目印に一緒に進んでいけたら楽しいだろうなと思います。

インタビュー・テキスト・写真:岸本洋子

 

岸本洋子ってこんな人

台湾品質の副編集長。兵庫生まれ、京都育ちのフリーエディター・ライター。出版社勤務、薬膳講師といった経験ののち、色んな縁と偶然が重なって台湾に住むことに。ビールとコーヒーをこよなく愛する健康オタク。オシャレなレストランより、赤ちょうちんの居酒屋が好き。山の中で生まれ育った反動で、休みがあるとすぐに海に飛んで行きます。
@yoko_taiwan