【インタビュー】紙の上を旅するように描く『紙上行旅(Paper Travel)』

先日、東京蔵前の『台感』にて行われた『紙上行旅』展覧会。
期間中は、日本での初めての個展ということもあり、たくさんの人でにぎわいました。

シンプルなイラストなのに、ずっと見ていたくなる。飽きがまったく来ない。
彼のイラストを見た人は、みんななぜか同じような感想を抱きます。

そんな『紙上行旅』の持つ不思議な世界感と人気の秘密を、オーナーでもあるイラストレーターのTENG YUさんに聞いてきました。


 

― まずは『紙上行旅(Paper Travel)』のことを紹介してもらえますか?

紙上行旅は2013年に設立した、台湾の挿絵ブランドです。今年で5周年を迎えました。

紙製のアイテムを発表している他に、様々な人や企業とコラボ商品を作り続けています。私たちはこれまで色んな製品を、色んな人と作ってきた経験から「私たちの商品に制限はない、ただお客さまが欲しいものを作る」というポリシーを持ち、実践し続けています。(予算以外の制限はないと信じています!)

 

― 紙上行旅というブランド名がとってもステキだなって、思いました。

あはは、ありがとう。

イラストレーターになったばかりの頃、紙のノートに生活や旅行のことを記録していました。そこから『紙上行旅(Paper Travel)というブランド名が生まれました。

今は、旅行や生活に限らず、自分が面白いと感じた色んなことを描いています。それと同時に、設定された予算の範囲内で様々な制作方法にもチャレンジしているんです。

― どんなチャレンジですか?

台湾の伝統的な紙製品や印刷方法を試しています。昔から伝わる台湾文化の可能性を広げたいなって思っています。そしてこんなチャレンジが私の商品に、質の高い特色がつけられるかなと。

▲ 台感での展示のために書き下ろされた新作

大量生産は難しいかもしれないけれど、一枚一枚自分が作れる最高の製品を作りたいんですね。もちろん、品質の管理は楽しい半面すごく手間がかかって大変。だけど、手にとってくれた人が喜んでくれるのが本当に大好きだから頑張れるんです。『紙上行旅』の商品は毎回多くても500個ほどしか作りません。そして完売したら、それで終わり。

▲ 気に入った作品があれば、完売前に手に入れなきゃ…です

 

― 紙アイテムを作るって、ただ描いて刷って終わりという訳ではないんですね。

そうですね。ひとつの良い商品を作りたいのなら、いろんなことに気を配る必要があります。作品自身がすばらしい出来であるのはもちろん、それを発表する場やデザインがマッチして初めて、その作品の素晴らしさを多くの人に理解してもらえると思っています。

― こだわり抜いて作られたアイテムの中で、『紙上行旅』の代表作と言えるものって何でしょう?

私はまだ代表作があるとは思っていません。なぜなら、どの作品も時間が経ち改めて見返すと、「あぁまだまだ私は未熟だな、もっとうまくなりたい」と思わせるのものばかりだから。でもあえて好きな作品をひとつあげるとしたら、「勇敢挑戰未知無時效手帳」かな。

▲ 勇敢挑戰未知無時效手帳 は今年発売された手帳

この作品は私が今取り組んでいる色んな挑戦がギュッとつまった一冊。まず、この手帳のために4種類の紙を選びました。そして短編絵本と手帳機能を合体させたのです。またインクペン、鉛筆、水彩、油彩、どんな道具でも心地よく書きることにこだわりました。またイラストページには特別な印刷が施してあって、それもぜひチェックしてほしいです。

絵本パートのストーリーはAmpersandsというアーティストと一緒に作り上げました。私自身もこのコラボシリーズが大のお気に入りで…。もともとは簡単な挿絵を描くだけの予定でしたが、描き終えたあとに、これでこのプロジェクトが終わってしまうのがもったいない! そんな気持ちになり、今回の物語が生まれたのです。今後もこのような新しい取り組みにはドンドン挑戦していきたいです。

一番売れたのはきっと『台灣小角落』。台湾テーマの作品ですが、多くの台湾のお客さんが手にとってくれました。

 

― 最近では色んな企業や他のイラストレーターの方とコラボ商品も作ってらっしゃいますよね。

去年の年末から台湾の他のイラストレーターとのコラボアイテムの制作も開始しました。台湾にはまだまだステキなイラストレーターがたくさんいます! そんな彼らと一緒にものづくりをすることで、私の作品をもっと多くの人に知ってもらえる、そして彼らの作品を私のファンにも伝えられると思っています。

― コラボ作品を作るときに気をつけていることはありますか?

まず大事なのはデザインの目的、そしてデザインを通して達成したいことは何かをはっきりと認識すること。なぜなら「良いデザイン」とは時間や場所が違ってくれば、まったく変わってくるものだからです。でも時として良い設計のものが良い作品と言えないこともあるから、難しいですね。

 

― 日本にはよく旅行に来ているそうですね! 日本文化をどう見ていますか?

毎回日本に行くときは、一人の外国人観光客として色んなコト・モノを見て回っています。ただ、まだ日本の深層部分を理解できていないと思うので、日本文化を語るのはとても難しいですね(笑)。

しかし、日本のアニメ文化は確実に私のイラストに大きな影響をあたえていると思います。小さな頃からイラストを描くのが大好きでしが、大きくなりイラストに対して真剣に向き合った時、色んな日本のマンガを研究しました。

当時特別に好きだったのは井上雄彦さん。スラムダンクを見た瞬間、バスケットシーンの臨場感に感動しました。その後何度も身体の描き方を、漫画を見ながら描いたことをよく覚えています。他には五味太郎さんの絵本や宮崎駿さんの漫画なども小さい頃から変わらずお気に入りです。

 

― 最後にイラストレターとしてブランドを運営していくことの醍醐味を教えてください。

自分のブランドを持つということは、「いつも学びながら作る」の繰り返しです。問題にぶちあったら解決をして進むしかないのです。毎日、自分とは何か、そしてみんなに渡したいものは何かを考える。そして何かを盲目的に追いかけるのではなく、自分の世界を確立して、試し、そしてシェアしていければと思っています。

 

◆ 紙上行旅(Paper Travel)

ホームページ:http://tengyulab.com/
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テキスト、写真提供:紙上行旅
翻訳、編集:東 洋子 @yoko_taiwan